企業の防災備蓄品リスト|会社で用意するものと優先順位

会社の防災備蓄。何をどれだけ用意するかをそなまるが解説する

大きな地震で電車が止まり、社員が会社から帰れなくなった。停電と断水も重なれば、普段の給湯室やトイレを使えないまま、職場で夜を過ごすことも考えられます。水と非常食は買ってあっても、トイレや寝具まで用意できているでしょうか。

会社の備蓄は、水・食料・トイレ・衛生用品・照明・防寒用品を基本に、対象人数の3日分を目安として整えます。予算が限られる場合は、使える在庫を確認し、足りない役割と数量を分けて買い足しましょう。

ここでは、安全を確認した建物で社員が一時待機するための備蓄を扱います。火災や津波、倒壊などの危険がある場合は、備蓄の有無にかかわらず安全な場所への避難が優先です。

この記事の目次

会社で用意する防災備蓄品リスト

水と食料に加え、排せつ、清潔さ、明かり、体温と休息を支える用品まで確認します。

水、食料、トイレ、衛生用品、照明、防寒用品の6つの役割
社内待機の基本となる6つの備え
種類・役割 用意するもの 購入前の確認
水
飲用・調理
保存水、飲用できるペットボトル水 総容量、期限、配りやすいボトルの大きさ
食料
食事の確保
主食、おかず、補食、箸・スプーン 加熱・水戻しの要否、原材料、一食量
トイレ
排せつ物の処理
便袋・凝固剤、防臭袋、紙、必要なら簡易便座 使用できる回数、設置場所、使用後の保管
衛生用品
手や体を清潔に保つ
手指衛生用品、ウェットシート、マスク、生理用品、使い捨て手袋、ごみ袋 使う人、用途、配布場所と消費量
照明
暗い場所での移動・作業
懐中電灯、ヘッドライト、ランタン、予備電池 点灯、電池の規格、使える時間、配置
防寒用品
保温・休息
毛布、保温シート、床に敷くマット 人数分、床の冷え、季節、収納場所

この6種類に加え、救急箱やヘルメット、ラジオ、モバイルバッテリーなども確認します。工場・医療・介護施設などで必要となる保護具や電源は、事業所ごとの条件で別途そろえます。

人数から計算する会社の備蓄量

災害後に大勢が一斉に帰宅を始めると、道路の混雑などで救助・救急活動を妨げるおそれがあります。内閣府の「帰宅困難者等対策ガイドライン」(2026年1月改定)は、大規模地震で被災する可能性がある事業者に向け、施設内で待機する従業員等のために3日分の備蓄量の目安を示しています。[1]

50人の3日分の目安は水450L、主食450食、トイレ750回分

ただし、3日たてば電気や水道が復旧し、支援物資が届くという意味ではありません。これは一般的な事業所で一時待機を考えるための目安です。自治体のルールや建物の受入条件、施設ごとの計画も確認し、地域の被害想定や孤立の可能性、復旧に従事する人の滞在期間に応じて、3日分を超える備えも検討します。

基本の計算は「1人1日分×対象人数×日数」です。水は1人1日3L、主食は1日3食、トイレは1日5回程度を目安に計算します。1人3日分なら水9L・主食9食・トイレ15回分。毛布は1人1枚が目安です。[1][2]

対象者が3日間待機する場合の数量
対象人数 水 主食 トイレ 毛布
1人 9L 9食 15回分 1枚
10人 90L 90食 150回分 10枚
30人 270L 270食 450回分 30枚
50人 450L 450食 750回分 50枚

この表は対象人数分のみで、別枠の来客分や予備は含みません。主食9食は、3日間の朝昼夕に食べる分です。小さなパンや菓子を9個そろえるだけでなく、一食分として食べる量も確認します。トイレの回数には個人差があるため、使う人の状況や訓練で消費する分も考えます。

人数は平均出社人数でなく、会議や研修、シフト交代が重なる日も含めた最大同時出社人数から考えます。正社員だけでなく、派遣社員や常駐する委託先も数え、来客を受け入れる分を別に見積もります。東京都の資料は最大同時出社人数での計算を案内しています。[2]全社員が出社する日があるなら、その人数で確認しましょう。

人数と在庫は拠点ごとに確認します。本社と支店の在庫を合算して足りていても、交通が止まれば必要な拠点へ運べないためです。必要量と不足量は、企業備蓄の準備・点検シート(無料)へ記録できます。受け取りには無料会員登録・ログインが必要です。

予算が限られるときの優先順位

購入は、6種類の基本品目で欠けているものをそろえ、次に3日分に足りない数量を補う順で検討します。トイレの代わりがない、停電時の照明がない、寒い夜を過ごす寝具がない、といった不足を先に確認しましょう。

在庫を日数に換算して不足を見つける

例えば50人の会社で、水が300L、主食が450食、トイレが300回分あったとします。先ほどの1日分の目安で割ると、それぞれの在庫が何日分に当たるかが分かります。

50人の在庫例を日数へ換算。水2日、主食3日、トイレ1.2日で、不足する数量が異なる
50人・3日分を目標にした在庫確認の例
品目 使える在庫 50人の1日分 何日分か 3日分までの不足
水 300L 150L 2日分 150L
主食 450食 150食 3日分 なし
トイレ 300回分 250回分 1.2日分 450回分

計算は水300L÷(50人×3L)、主食450食÷(50人×3食)、トイレ300回分÷(50人×5回)です。同じ「備蓄済み」でも、品目ごとに足りる日数は違います。この例なら、主食をさらに増やすより、トイレ450回分と水150Lの不足を補うと、3日分の目標へ近づけます。衛生用品・照明・防寒用品の欠落も別に確認します。

買い足す順序は、品目の知名度より「何が先に足りなくなるか」で考えます。ただし、日数が短い順だけで決めるのではなく、照明や保温のように代わりがない機能、季節、使う人の条件も合わせて判断します。

不足数と更新費から予算を出す

購入額は「不足数×単価」で見積もり、送料、コップや防臭袋・予備電池、期限前の更新費も予算に入れます。台帳の数量をそのまま引かず、期限・保管状態・動作を確認し、災害時にも取り出して配れる在庫を数えます。別の拠点にあって運べないものも、その場で使う在庫とは分けて管理します。

例えば不足するトイレ450回分を、1箱50回分の製品で補うなら9箱です。便袋・凝固剤など、必要な付属品が450回分そろうかも確認します。大きな電源や調理設備は、何に使うか、何人で扱うかを確かめてから見積もりに入れます。社内待機に必要な水やトイレが足りないまま、高額な機器だけが増えることは避けましょう。

備蓄品の役割と選ぶときの注意点

水は容量と配り方を合わせて考える

1人1日3Lは飲用・調理用の目安です。手洗いや清掃、トイレを流す水まで含めた量ではありません。[3]飲用・調理用の水を確保したうえで、生活用水の確保や水を使わない方法も考えます。

500mlのボトルは各自へ渡しやすく、2Lのボトルは調理や取り分けに使えます。2Lの水を複数人で分けるなら、紙コップなども必要です。容量だけでなく、誰が持ち、どこで飲むかに合わせてボトルを選びましょう。家庭向けの基本的な数え方は、水の備蓄量と保存方法でも解説しています。

50人の在庫確認の例で不足する水150Lを、次の保存水で補うなら、13ケースで156L、商品代は20,579円(税込・送料別)です。水だけの試算で、まとめて手配できる数量と納期は購入前に確認してください。

サーフビバレッジ 5年保存水の商品画像

サーフビバレッジ 5年保存水|2L×6本

社内で取り分ける水の候補です。2L×6本で合計12L。各自へ配る場合は、コップや小容量ボトルの備えも合わせて考えましょう。

1ケース1,583円(税込)。送料は購入手続きで確認できます。商品名の保存年数と、お届け時に残っている期限は区別して確認してください。

2L×6本の保存水を確認する

食料は水や加熱がなくても食べられるものを含める

カップ麺だけでは、お湯を沸かせないと食事に困ります。アルファ化米にも水戻しが必要です。保存期間と一緒に食べ方を確認し、開けて食べられるパンやクラッカー、常温で食べられると表示されたレトルト食品などを組み合わせます。

水・熱源・食器がなくても食べ始められる食品を備えましょう。主食におかずを合わせ、箸・スプーン、開封に必要な道具も用意します。アレルギーや食事上の制限がある人には、本人が食べられる食品を事前に確認します。商品例と確認項目は、火を使わない非常食の選び方を参考にしてください。

トイレは使う前から保管まで一緒に準備する

断水や排水設備の損傷に備え、水を流さずに使える携帯トイレを用意します。既存の洋式便器に袋を取り付けるタイプなら、便袋と凝固剤などを使って処理します。既存のトイレを安全に使えない場合には、簡易便座や目隠しも必要です。

「50回分」と書かれていても、付属する便袋・凝固剤・防臭袋の数をそれぞれ確認します。さらに、手袋や紙、手指衛生用品と、使用済みの袋を保管する場所まで決めておきましょう。内閣府のトイレのガイドラインも、使用済み便袋の保管・回収・臭気対策を挙げています。[4]

トイレの備蓄は、回数分の用品と、使用後に保管する準備をそろえて数えます。事業所の使用済み便袋をどう回収してもらうかは、建物管理者、自治体、契約する廃棄物処理業者に確認してください。家庭ごみと同じ方法で出せるとは限りません。袋の取り付けなどは、携帯トイレの使い方で確認できます。

衛生用品は手・体・トイレで使う分を分ける

手指衛生用品、体を拭くシート、トイレットペーパー、マスク、生理用品、使い捨て手袋、ごみ袋を確認します。用途が違うシートを一括して数えず、手に使うもの、体に使うもの、掃除に使うものを分けましょう。

衛生用品は「1人へ何枚・何個配るか」と「共用場所で何回補充するか」を決め、対象人数と日数に置き換えます。袋の入り数だけで判断せず、開封後の保管条件や実際の使用量も確かめましょう。

生理用品などは必要な人が受け取りやすい場所と配り方まで決めます。社員ごとの必要品は、全員の前で申告させず、担当者へ個別に相談できるようにします。常備薬、予備の眼鏡、着替えなど、本人が用意するものとの分担も共有しましょう。

照明は移動用と作業用を分けて配置する

懐中電灯やヘッドライトは移動や両手を使う作業、ランタンは配布場所や休憩場所などの照明に向きます。備蓄庫とトイレへ向かう場所にも、取り出せる照明を用意しましょう。照明を全て暗い倉庫へ入れてしまうと、そこまでたどり着く明かりがなくなります。

電池の規格と本数、想定する明るさでの連続使用時間を確認し、予備電池を組み合わせます。スマートフォンは連絡にも使うため、専用の照明を別に用意します。

防寒用品は掛けるものと床に敷くものを用意する

暖房が止まったオフィスで夜を過ごすなら、毛布や保温シートに加え、床へ敷くマットも確認します。椅子や机があっても、休息に使える場所と寝具があるとは限りません。

毛布の枚数と、床の冷えを防げる休息場所を一緒に確保しましょう。寒い地域や冬の夜間を想定する職場では、防寒用品も最初にそろえる対象です。夏は暑さへの備えも必要になり、季節によって内容を見直します。

住所と建物の条件から、備蓄の置き場所を決める

同じ50人の会社でも、地下の倉庫と高層階のオフィスでは、備蓄を使えなくなる理由が違います。数量を決めたら、拠点の住所・使用階・設備の位置を合わせて確認しましょう。

水450Lは約450kg。使う階へ分ける保管方法と、棚・床の条件を確認する

国土地理院のハザードマップポータルサイトと自治体のハザードマップで、洪水・内水・高潮・津波・土砂災害などを調べます。地図の色だけで判断せず、対象の災害、想定条件、作成・更新時点を確認し、社内の記録に出典と確認日を残します。[6]

拠点の条件を備蓄計画へ反映する例
拠点の条件 確認すること 備え方の例
低層階・地下に浸水のおそれがある 備蓄庫・電源設備と想定浸水の関係 浸水時にも使える保管場所への移設や分散を、施設管理者と検討する
高層階で働く人が多い エレベーター停止時に、誰がどこへ物資を運ぶか 使う階へ分けて保管し、階段で運べる重さと配布担当を確かめる
津波・河川・斜面の危険がある 待機場所と避難経路が、その災害で安全に使えるか 災害の種類に合う避難先・代替経路を決め、危険な備蓄庫へ取りに戻らない

上の対策は、位置と建物の条件から考えた計画例です。地図に色がない場所も、安全が保証されているわけではありません。住所から災害リスクを調べる機能を確認の入口にし、自治体の最新情報、現地の状況、施設管理者のルールと照合してください。

近くの「指定緊急避難場所」と「指定避難所」も区別します。前者は災害の危険から命を守る場所、後者は一定期間の滞在を目的とする施設です。距離だけでなく、対象の災害と開設・利用条件まで確認します。[7]

買った備蓄を社員が使える状態にする

備蓄品は、保管場所・期限・配布担当者まで決めて初めて使いやすくなります。東京都は、配布のしやすさと被害への備えから、数か所に分けて保管し、配布ルールも用意するよう案内しています。[2]

担当者以外の人も1人1日分の水3L、主食3食、トイレ5回分を取り出せるか確かめる

東京都が掲載する令和4年度のみずほリースの事例では、防災倉庫の扉に写真付きの備蓄品一覧を掲示し、女性役職員等の意見を踏まえて衛生用品や配布方法も見直しています。[5]当時の取り組みですが、写真付き一覧と利用者の意見を、自社の置き方・配り方の点検へ取り入れられます。

50人3日分の水450Lは、水だけで約450kgあります。エレベーターが止まってから別の階へ運ぶ前提にしないよう、使う階へ分けて置く方法を検討します。浸水や棚の転倒、避難経路を塞ぐ置き方を避け、棚・床へかかる重さも建物管理者と確認しましょう。

リストには「品名・規格/必要数/現在数/不足数/保管場所/期限/次の点検・入替日/担当・副担当」を残します。担当者が休みでも、保管場所を開けて配れる状態にしましょう。鍵と開錠方法、配布を始める判断、社員への案内まで決めます。

訓練では、担当者以外の人に、リストを見て「1人1日分の水3L・主食3食・トイレ5回分」を取り出してもらいましょう。照明の点灯や便袋の取り付け、使い終えた袋の保管場所までたどると、鍵、運ぶ手間、付属品の不足を点検できます。訓練で使った分は補充します。

食品の期限前には試食や社内配布を行い、消費した分を補充します。普段食べない食品を買い込むと入れ替えに困るため、ローリングストックのメリットとつまずきも参考になります。

まとめ

会社の防災備蓄は、水・食料・トイレ・衛生用品・照明・防寒用品から確認します。人数に応じた3日分を目安に、今あるものと不足を数え、保管・配布・更新まで決めましょう。

6つの役割、使える在庫の日数、保管場所と配布担当を確認する

まず1拠点で6種類の欠落と対象人数を確認し、水・主食・トイレの使える在庫を日数に換算しましょう。不足数・保管場所・担当者を点検表へ残すと、発注と社内確認を進められます。

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参考資料

  1. 内閣府「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」(2026年1月):3日分の目安、対象者、備蓄品の保管と配布。
  2. 東京都「事業所防災リーダー通信2024 Vol.5」:水・主食・非常用トイレの目安量、分散保管と管理。
  3. 農林水産省「大事な水、どうやって備えますか?」:飲用・調理用の水と、別に必要となる水。
  4. 内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(2024年12月改定):携帯トイレの特徴、使用済み便袋の保管・回収・臭気対策。
  5. 東京都掲載・みずほリース株式会社の備蓄事例:倉庫扉の写真付き一覧、社員の意見に基づく衛生用品と配布方法の見直し。
  6. 国土地理院「ハザードマップポータルサイト」:災害の種類ごとのリスク情報と、自治体のハザードマップの確認。
  7. 内閣府「避難場所に関すること」:指定緊急避難場所と指定避難所の違い。