企業の防災備蓄はいくらかかる?購入・更新・廃棄までの予算と見積もり

災害で交通機関や物流が止まったとき、社員を支える水や食料を会社で確保しておくには、購入後も備蓄を維持する予算が必要です。最初の見積書は用意できても、数年後の買い替えや古い備蓄の処分まで、いくら見込めばよいか迷うことがあります。
例えば、定期更新する備蓄品を300万円でそろえ、5年ごとに同じ金額で入れ替える計画なら、次の更新に向けた年あたりの目安は60万円です。これに保管・点検・配送・配布や処分の費用を加えます。初回の購入額、毎年の管理費、更新年に必要な支払額を分けると、備蓄を続けるための予算を社内に説明しやすくなります。
初回の購入費と、購入後にかかる費用を分ける

企業の備蓄費用は人数だけでは決まりません。今ある在庫、必要な用品、拠点数、納品先、保管場所によって変わります。購入する品目と数量が決まったら、初回・毎年・更新時の3つに分けて費用を積み上げます。品目の確認には企業の防災備蓄品リストも参考になります。
| 予算を見込む時期 | 主な費用 |
|---|---|
| 初めてそろえるとき | 不足する備蓄品、送料・搬入、収納棚・容器、初回の検品・配置 |
| 毎年の管理 | 使用した分の補充、保管料、棚卸し、期限管理、機器の点検・保守 |
| 入れ替えるとき | 更新品の購入・配送、旧在庫の仕分け、社員配布・寄附・回収処分 |
社内の空きスペースを使えば、新しい倉庫賃料がかからない場合はあります。一方、受け取り、仕分け、棚卸しをする人の時間は必要です。外部へ支払う金額と、社内で使う作業時間を分けて示しましょう。
確認した商品価格では、100人分の3品目で807,555円
購入費の一例として、100人・3日分の水、主食、携帯トイレを試算しました。2026年10月23日に確認した税込表示価格です。水900L、主食900食、トイレ1,500回分を購入する条件で、水と主食はそなまるストア、トイレはメーカー公式通販の価格を使っています。全国平均や法人向けの確定見積もりではありません。
| 商品・販売単位 | 税込単価 | 購入数 | 小計 |
|---|---|---|---|
| サーフビバレッジ 5年保存水/2L×6本 | 1,583円 | 75箱 | 118,725円 |
| アルファー食品 安心米 白飯/100g×15袋 | 6,943円 | 60箱 | 416,580円 |
| マイレット P-100/100回分 | 18,150円 | 15箱 | 272,250円 |
| 3品目の合計 | — | — | 807,555円 |
807,555円は3品目の商品代だけです。副食、毛布・敷物、衛生用品、照明・電源、送料・搬入・保管費などは含みません。主食9食で必要な栄養がすべて満たされるわけでもないため、自社で必要な品目を加えて初回の総予算を作ります。P-100は凝固剤と排便袋のセットで、便器は含まれません。数量の前提は内閣府の資料を参考にした計算条件です。[1][2]
初回の総額が分かったら、その明細に更新時期を書き足します。期限や使用量に応じて買い直す消耗品と、点検しながら使い続ける物を分けておけば、次年度以降の予算を組み立てられます。
更新費は、消耗品と機器を分けて計算する

初回の金額が決まったら、何を、いつ買い直すかを品目ごとに決めます。水や食料と、繰り返し使う機器を同じ年数で割ると、更新予算が実態に合わなくなります。
| 区分 | 例 | 予算の考え方 |
|---|---|---|
| 定期更新する消耗品 | 保存水、非常食、携帯トイレ、衛生用品、乾電池 | 納品時の残存期限、保管条件、使用量から更新・補充の金額と時期を決める |
| 点検して使い続ける機器・用品 | ポータブル電源、ライト、ラジオ、ヘルメット、収納棚 | メーカーの点検・交換目安と状態を確認し、保守・部品・本体交換を見込む |
| 備蓄を運用する費用 | 保管、棚卸し、搬入、配布、寄附、処分 | 毎年発生するものと、更新時だけ発生するものを分ける |
例えば初回の300万円のうち、5年で更新する消耗品が200万円、機器類が100万円なら、消耗品の更新に向けた年あたりの目安は40万円です。機器類100万円は別に点検・交換計画を立てます。初回の合計額を一律に5で割ると、この違いが見えなくなります。
機器類は、食品のような賞味期限がないから更新費もゼロ、とは考えないようにします。電池やバッテリー、付属品の交換も必要です。ヘルメットにも材質や使用開始時期に応じた交換目安があり、ミドリ安全は業界の取扱いマニュアルに基づく目安を案内しています。[3]
300万円を5年で更新するなら、年60万円を目安にする

ここでは、定期更新する備蓄品の購入費が300万円、更新まで5年、同じ数量・価格で買い直すというモデルを置きます。実際の商品一式の見積額や保存期間を示す数字ではありません。
| 予算で説明すること | 計算例 |
|---|---|
| 初回の支払い | 備蓄品の購入費300万円 |
| 次の更新に向けた年あたりの目安 | 300万円÷5年=60万円 |
| 一括更新する場合の支払い | 初回から5年後に、再び購入費300万円 |
年60万円は将来の更新を見越して予算を考えるための額です。毎年60万円ずつ購入する計画とは異なり、税務上、毎年60万円ずつ経費にするという意味でもありません。保管・作業・配送・処分費や価格改定は別に見込み、更新が近づいたら見積額を取り直します。
更新時期を複数年度に分ければ、支払いが一度に集中することを抑えられます。ただし、初回から必要な備蓄量は確保し、実際の期限に合わせて分けることが前提です。注文日を変えるだけでは同じ期限の商品が届く場合もあるため、納品時の期限と更新予定を品目・ロットごとに記録します。
社員配布や訓練で、廃棄を減らす計画を作る

食品を使い、使った分を補充するローリングストックは、会社の備蓄にも取り入れられます。期限が近づく前の社員配布や防災訓練での試食を、更新計画と一緒に組みましょう。
社員に配っても、新しく補充する備蓄品の購入費は必要です。減らせる可能性があるのは、食べずに捨てる量と、回収・処分にかかる費用です。訓練と組み合わせれば、味や戻し方、食べにくさを確かめる機会にもなります。
消費者庁の2026年の調査では、入れ替えた食品を社員が受け取らず、廃棄に至った例も報告されています。寄附についても、配送費や受入先との調整が負担として挙がっています。「配る」「寄附する」と決めただけでは、費用も廃棄もなくなるとは限りません。[4]
| 旧在庫の使い道 | 予算と段取りで確かめること |
|---|---|
| 社員への配布 | 希望者と配布量、持ち帰りやすさ、期限・アレルギー表示、仕分けと社内案内の作業 |
| 防災訓練・試食 | 実施日、参加人数、調理や配膳の準備、使った分の補充 |
| フードバンク等への寄附 | 受入品目と必要な残存期限、数量、梱包・配送費、受入先との調整 |
| 回収・処分 | 自社の処理契約に含まれるか、分別・開梱の作業、追加の回収・運搬・処分費 |
社員へ配る場合は、事前に希望を取り、受け取り期間と配布量を決めておくと、余った食品の行き先も早く考えられます。水など重い物を持ち帰れるか、在宅勤務者へ送るなら配送費が必要かも確認しましょう。配布する食品は期限に加え、保管状態や包装の破損も点検します。
処分費は品目・量・回収方法で変わるため、委託先に確認します。寄附も配送費と作業を含めて比較し、処分費だけを基準に判断しないことが大切です。
旧在庫の配布日から逆算して、新しい備蓄の納品日と受入先の条件を確認しましょう。必要量を切らさないよう新しい在庫を確保してから配布し、入れ替え時に新旧両方を置くスペースと検品の時間も見込んでおきます。
経費処理と助成金を、発注前に確認する

非常食は、備蓄時に消耗品費として扱える事例がある
国税庁の「非常用食料品の取扱い」では、長期保存する災害用食料品について、備蓄した時点の損金(消耗品費)に算入して差し支えないと回答しています。長期保存できる食品だからといって、保存年数にわたって費用を分割する扱いになるとは限りません。[5]
一方、ポータブル電源や収納棚などは、購入金額や使用の実態によって資産計上・減価償却などの判断が関わります。食品の取扱いをすべての防災用品へ当てはめず、品目別の見積書を経理へ渡し、使用する勘定科目、計上時期、資産管理が必要な物を確認しましょう。
助成金は「対象地域・上限・購入前の手続き」を確認する
補助金・助成金は、所在地、企業規模、対象品目、年度で条件が変わります。「企業の備蓄なら一律いくら」と見込まず、事業所のある自治体の制度から確かめます。
例えば千代田区の事業所向け制度は、区内で事業を営み、全社の従業員数が5人以上300人未満であることなどが条件です。掲載チラシでは、町会長の推薦がある事業所は対象購入費の3分の2、それ以外は3分の1で、いずれも上限10万円と案内されています。対象となる人数は区内勤務者分で、納税や過去の利用についても条件があります。[6][7]
この制度では、交付決定通知が届く前に購入手続きをすると助成対象外です。送料は対象外で、水・食料には交付決定日から3年以上の残存期限が必要です。購入後の実績報告には、領収書や発注日の分かる納品書、数量・期限を確認できる写真なども必要です。[6]
仮に助成対象として認められた購入費が30万円、助成率が3分の1なら助成額は10万円です。購入時に30万円を支払い、後から10万円を受け取る場合、最初に用意する購入資金は30万円、助成後の商品代の負担は20万円になります。対象外の送料などは別です。
2026年度の申請受付は12月28日必着とされていますが、予算に達すると早期終了する場合があります。自社が対象か、申請時点で受付中かを確認してから予定を組みます。助成金の受取前に購入代金を支払う場合は、購入時に用意する資金と、助成後の自己負担額を分けて稟議に記載しましょう。[6]
購入先は、残存期限・納期・配送条件まで比べる

予算を抑えるには、同じ数量・用途を満たす見積もりで、どこまでの費用が含まれるかをそろえて比べます。商品代が安くても、使える期間が短い、支店へ再配送が必要、指定階への搬入が別料金という条件なら、支払総額や更新頻度は変わります。
「5年保存」と、納品後に使える年数を分ける
メーカーの保存年数は、製造日などから数えるものがあります。見積もりでは、納品時に最低どれだけ期限が残っているかを確認します。
仮に、同じ用途・数量の商品で、更新まで使える期間が4年の見積もりAが100万円、5年のBが110万円だったとします。商品代をその期間で割ると、Aは年25万円、Bは年22万円です。送料や管理費を除いた計算例ですが、購入額に加えて、更新まで使える期間あたりの費用も比べると判断しやすくなります。
災害後の需要集中と、社内の発注日程を見込む
地震などの後は、注文が集中して希望の品目や納期を確保しにくくなることがあります。実際に、2024年9月の販売会社の案内には、南海トラフ地震臨時情報の発表後、水や非常食の欠品・受注増によって希望納期での納品が厳しくなったと記載されています。過去の事例であり、現在の欠品状況を示すものではありません。[8]
防災の日や年度末に購入を予定する場合も、取り扱うメーカー・販売店の受注状況を確認します。全商品共通の納期を決めつけず、社内決裁、助成金の事前手続き、実際の納期、旧在庫の配布日までを逆算しましょう。
| 見積書でそろえる条件 | 確認する内容 |
|---|---|
| 商品・期限 | 品名、仕様、入数、数量、税込・税抜の区別、納品時の最低残存期限 |
| 納期・欠品 | 出荷予定日と区別した全量の納品完了日、分納の可否、代替品の事前確認、見積有効期限 |
| 配送・搬入 | 拠点ごとの送料、納品場所、指定階・保管場所までの搬入範囲、搬入予約 |
| 支払い・書類 | 支払時期と方法、社内指定の見積書・請求書・納品書・領収書の発行可否、助成申請で必要な明細 |
| 更新時の対応 | 期限管理、配布や寄附、旧在庫の回収など、依頼できる作業と追加費用 |
本社へまとめて納める案と、拠点へ直接納める案も比較できます。本社での仕分け・梱包・転送にかかる費用と時間を含め、仕入先からの直送費と比べましょう。社内で作業する場合は、例えば2人で4時間なら8人時として示せます。
総務・経理で、初年度と次回更新までの予算を共有する

消費者庁の調査では、備蓄食料を備えている回答企業78社のうち、約8割で総務・業務管理部門が調達を担当していました。首都圏の大企業などの回答が多い調査で、すべての会社に当てはまる割合ではありませんが、総務が窓口となって関係部署と進める姿を考える参考になります。[4]
例えば、総務・防災担当が対象者と在庫を確認し、購買担当が取引条件をまとめます。施設管理担当には納品・保管場所を、経理には予算年度と会計処理を確認してもらう、と役割を分けられます。小規模な会社で兼任する場合も、確認する項目は分けておきます。
| 稟議に入れる項目 | 決裁者へ示す内容 |
|---|---|
| 目的と購入範囲 | 対象拠点・人数・日数、使用可能な在庫、今回買う物と不足を解消する範囲 |
| 初年度の支払総額 | 商品代、送料・搬入、棚などの導入費、選定・管理支援を依頼する場合の料金 |
| 翌年度以降 | 毎年の管理・補充費、品目ごとの更新年月と予定金額、旧在庫を配布・処分する費用 |
| 比較と発注条件 | 同じ仕様・数量・残存期限・納品条件での比較、選定理由、納期、支払条件 |
| 経理・助成金 | 計上予定の科目と時期、助成の申請条件・手続き順序、購入時の資金と助成後の負担 |
| 運用する人 | 主担当と代行者、保管場所、検品・点検・補充・更新の担当 |
更新予算を伝える記入例
今回、定期更新する備蓄品を300万円で整備します。初年度の申請総額は商品代300万円に送料・搬入費○円、保管用品○円を加えた○円です。別紙見積書に品目・数量・納品時の残存期限を記載します。
次回は5年後の更新を計画し、購入費は同額を仮置きしています。更新に向けた年あたりの予算目安は60万円です。毎年の保管・点検・補充費○円と、更新時の配布・処分費○円は別に見込みます。価格と期限は更新前の見積もりで再確認します。
保管場所は○○、管理担当は○○、代行者は○○です。旧在庫は新しい備蓄を確保してから、社員への配布・訓練での使用を優先し、残る品目の受入先と処分費を確認します。
300万円と5年は、説明用に置いた条件です。実際の申請では品目ごとの期限・更新年に直し、○は見積額と自社の情報で埋めます。未見積もりの項目を0円にせず、確認中として残しましょう。助成金は申請予定と交付決定済みを区別します。
そなまるストアで、購入と備蓄の見直しを相談する

購入費だけでなく、何を選び、どう入れ替えて管理するかまで相談したい場合は、企業の防災備蓄支援をご利用いただけます。合同会社サットワンとテルツ株式会社の共同プログラムとして、東京防災情報誌編集長・防災士の乾栄一郎が、備蓄品の選定や運用・管理ルールづくりを支援します。
乾はテレビ東京「なないろ日和」の防災特集やNHK Eテレの防災番組の監修経験を持ちます。こうした防災情報の発信・監修で得た知見をもとに、自社の人数、保管場所、使い方に合う商品選びと、更新・補充の方法を相談できます。[9]
支援料金は個別見積もりです。備蓄品・試食品などの物品費とは分けて、対象拠点、相談・選定・管理ルールづくりの範囲、費用を事前に確認します。更新予算を相談したい場合は、品目選定に加えて、更新時期や補充・配布の方法まで整理したい旨をお知らせください。
お問い合わせには、現在の備蓄リストと期限、拠点ごとの人数、希望する納品・更新時期、保管場所、予算の上限を、分かる範囲でお知らせください。商品購入の相談か、選定・管理の支援も希望するかを添えていただくと、必要な対応を整理できます。
購入する品目・数量が決まっている場合は、商品一覧で販売単位と商品詳細を確認できます。以下は今回の試算で使った商品です。掲載価格に送料は含みません。

サーフビバレッジ 5年保存水|2L×6本
1箱12L。箱ごとの購入費に加え、納品先への送料と納品時の残存期限を確認して検討します。
税込1,583円/送料別。2026年10月23日確認。
販売単位と商品詳細を確認する
アルファー食品 安心米 白飯|100g×15袋
水やお湯で戻す主食15食分。調理用の水と待ち時間、おかずなどの組み合わせも含めて選びます。
税込6,943円/送料別。2026年10月23日確認。
販売単位と商品詳細を確認するまとめ

企業の防災備蓄では、消耗品の購入と更新、機器の点検や交換、保管・配送・配布・処分までを予算に含めます。社員配布や寄附で廃棄を減らす場合も、補充する商品代と作業・配送の負担は見込んでおきましょう。
まず、品目ごとの購入費と更新予定を並べ、今年支払う額と、次回更新までに見込む額を分けてみましょう。納品時の残存期限、経費処理、助成金の手続き、旧在庫の使い道まで決めておくと、購入した後も維持できる予算になります。
出典・価格の確認先
- 内閣府「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」2026年1月:100人・3日分の試算の前提。
- 内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」2024年12月改定:1人1日5回を使った便袋数の計算例。
- ミドリ安全「ヘルメット(帽体)の使用期限(耐用年数)を教えて下さい」:材質・使用開始時期による交換目安。
- 消費者庁「企業等の災害時用備蓄食料の入替え時における活用状況に係る実態等についての調査業務」概要版、2026年4月:社員配布、寄附の負担、調達担当部門。首都圏の大企業や備蓄の有効活用に前向きな企業の回答が多い調査。
- 国税庁「非常用食料品の取扱い」:備蓄時の損金算入に関する質疑事例。2025年8月1日現在の法令・通達に基づく回答。
- 千代田区「事業所における備蓄物資購入の費用助成」2026年4月1日更新:2026年度の対象・申請・購入・実績報告の条件。
- 同ページ掲載の費用助成案内チラシ:助成率と上限額。制度は2026年10月23日に確認。
- フード・デリ「フード・デリ通信」2024年9月号:南海トラフ地震臨時情報発表後の欠品・納期への影響の案内。
- 東京防災情報誌「シン・東京防災NEXT過去からの提案」2025年10月26日:乾栄一郎の公開プロフィールに記載されたテレビ番組の監修歴。
- そなまるストア「サーフビバレッジ 5年保存水」、「アルファー食品 安心米 白飯」、マイレット公式通販「P-100」:試算に使った販売単位と税込価格。価格確認日:2026年10月23日。
