高齢者の非常食はどう選ぶ?硬さ・開けやすさ・一食量を確認

長く保存できる食品をまとめて用意したのに、いざ食べてみると硬くて食べにくい…。家族のために選んだおかずも、本人の口には合わなかった…。せっかくの備えでこうした失敗をしないために、買う前に「食べる人に合っているか」まで確かめておきたいですね。
特に高齢の方の非常食は、普段の食事を手がかりに、硬さ、噛みやすさ・飲み込みやすさ、開けやすさ、加熱や水の必要性、一度に食べ切れる量、味の好みで選ぶことをおすすめします。
今回は「高齢者の非常食」に焦点を当て、ご本人やご家族に合う食品の選び方を解説します。家族で試食するときの確認点や、備蓄の候補になる食品も紹介します。
高齢者だからといって、一律に介護食を選ぶ必要はありません。食事制限や飲み込みへの配慮が必要な方は、新しい食品を試す前に、普段相談している専門家へ確認してください。
高齢者の非常食は、普段の食事から選ぶ

最初に確認するのは、最近の食卓です。いつものご飯は普通の硬さか、やわらかめか。肉や野菜をどのくらいの大きさで食べ、主食とおかずをどれくらい残しているか。本人と一緒に見てみてください。
農林水産省の食品ストックガイドも、高齢者の備えは一般家庭と大きく違わないと説明し、噛むこと・飲み込むことに配慮が必要な人の備えを別に扱っています。[1] 普段の食事で困っていない人と、食事の形を調整している人では、選ぶ非常食も変わります。
| 普段の食事で分かること | 非常食を選ぶときの確認 |
|---|---|
| 普通のご飯やおかずを食べている | いつも好む食品から候補を探す。常温で食べるときの硬さや量、開封方法も本人が確かめる。 |
| 硬い肉や大きな具を避けている | 「やわらかい」という商品名だけで決めず、具の大きさや繊維、普段食べられる食感と比べる。 |
| 食事の形やとろみ、成分の指示がある | いつもの指示と商品の区分・原材料・栄養成分を照合する。代替品も、普段相談している専門家へ確認する。 |
家族が同じセットを食べる前提にせず、共通にできるものと、本人用に分けるものを決めましょう。例えば、魚のおかずは家族で共通にできても、一人は普通のご飯、もう一人は普段からやわらかいご飯を食べているなら、主食を別の商品にする方法があります。食事の指示がある場合は、その条件を先にそろえます。
味の好みも本人に聞いてください。「高齢だから和風」「甘いものなら食べられる」とは限りません。だしの香り、甘さ、辛さ、同じ味が続くことへの好みまで、食べられる量に関わります。
硬さと、噛む・飲み込む条件を分けて確かめる

「噛み切れること」と「飲み込めること」は、同じ確認ではありません。やわらかい魚でも身がばらける、おかゆでも米粒と水分が分かれるなど、口の中でのまとまり方は違います。農林水産省のガイドにも、食べる機能が弱くなった方では、レトルトのおかゆの水分がむせる原因になる場合があると記載されています。[1]
「おかゆ」「ゼリー」「やわらか食」という名前だけで、飲み込みに配慮が必要な人への適合を決めないでください。細かく刻む、水を足す、硬いものをふやかすといった方法も、その人に必要な食事の形になるとは限りません。
UDFの区分は、いつもの食事と照合する目安
ユニバーサルデザインフード(UDF)は、日本介護食品協議会の規格に基づき、食品の硬さやとろみなどに配慮した商品です。パッケージには「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の区分が表示されます。[2]
普段使っている食品の区分を控え、候補の商品と照合するときに役立ちます。ただし、区分だけで本人が安全に食べられることが決まるわけではありません。飲み込みに不安がある方は、新しい食品を試す前に、商品と食べるときの温度・形状を専門家に確認しましょう。「入れ歯だからこの区分」と、家族だけで判断しないことも大切です。[1][2]
むせることが増えた、食べる量が減ったなど、普段から変化がある場合も、かかりつけの医師・歯科医師や管理栄養士などへ相談してください。普段と同じ姿勢や介助が必要なら、それも食品と一緒に準備する条件です。
必要な食事の形に合う、ペースト状のおかずを備えるなら
普段からペースト状の食事を使っていて、次の商品が指示された条件に合うと確認できた方には、おかずの候補になります。高齢者全員に必要な食品として選ぶものではありません。

ハウス とろとろ煮込み クリームシチュー味【介護食品】|80g×40袋
なめらかなペースト状のおかず。1袋80gで、UDF「かまなくてよい」の区分です。1袋100kcalで、この1袋だけで一食をまかなう食品ではありません。[4]
80g×40袋の販売です。加水は不要。メーカー資料の食べ方は湯せん、または器へ移して電子レンジ加熱です。温められない場面でも必要な食事の形で使えるかは、購入前にメーカーと普段相談している専門家へ確認してください。器とスプーンも用意します。
8,578円(税込・セット総額)
送料は購入手続きで表示されます。
ペースト状のおかず40袋の条件を見る塩分・たんぱく質・水分などの食事制限がある場合は、非常時の対応も含めて、普段相談している医師や管理栄養士へ確認しましょう。商品名の「介護食品」「減塩」だけで判断せず、食べる量に応じた成分と原材料・アレルゲンを照合します。災害時も普段の食事療法を継続できるよう備えることが基本です。[1]
本人が開けて食べ始められる容器を選ぶ

中身が食べられても、容器を開けられなければ食事を始められません。家族が開けて渡す前提にせず、本人が普段の道具で開け、器に移して食べられるかを確かめます。介助が必要な方は、誰がどこを手伝うかも決めておきましょう。
- 缶は、プルタブに指をかけられるか、缶を押さえてふたを引けるか。
- パウチは、開け口が見つかるか、つまんで裂けるか、途中で止まらず開けられるか。
- 開封後は、中身をこぼさず器へ移せるか、スプーンですくえるか。
缶切り不要の缶や、手で切れる袋も、本人にとって開けやすいとは限りません。手の痛みや握る力、見え方によって、使いやすい容器は変わります。キユーピーも、パウチを開ける位置や中身の出し方を具体的に案内しています。[3]
はさみや開封を補助する道具を使うなら、食品と同じ場所に置き、本人が使えるものを用意します。手に負担がかかる方法を無理に続けるより、別の容器の商品も比べてみましょう。先に開封して別容器へ小分けし、長期保存する方法には変えないでください。
袋から直接食べることが難しい方には、使い慣れた器とスプーンも必要です。いつも家族が盛り付けているなら、本人が一人になる時間帯の食事をどう用意するかも考えておきましょう。
加熱・水戻しができないときも食べられるか

普段は電子レンジで温めている食品も、停電時には同じ方法で用意できません。保存方法、加熱や加水の要否を表示で確認し、そのうえで本人の食べる条件に合うかを見ます。
「常温で保存できるか」「温めずに食べられるか」「その温度で本人が食べられるか」を分けて確認しましょう。キユーピーの「やさしい献立」のQ&Aでも、レトルトは温めずに食べられる一方、ごはんやおじやは冷えると硬さが変わり、温めて食べることを勧めています。これは同シリーズの案内で、他の商品へ一律に当てはめるものではありません。[3]
温めると食べやすい食品は、水や熱源を用意する必要があります。加熱できないときの代替品も、普段の専門家の指示と合うものを選んでおきます。本人に合わない食品を無理に試す必要はありません。
水戻しの食品には、飲用できる水と待ち時間が必要です。水の量や温度によって仕上がりが変わるため、表示された作り方で、食べるときの硬さまで確認しましょう。調理せず食べられる食品との違いは、火を使わない非常食の選び方でも整理しています。
水と待ち時間を用意できるなら、白がゆも候補

アルファー食品 安心米 白がゆ【アルファ米・保存食】|41g×30袋
水かお湯を加えて作る白がゆです。1袋41gは乾燥時の量です。できあがり量を袋の表示で確認し、本人が食べ切れる量かを比べてください。UDF「歯ぐきでつぶせる」の区分で、本人の食べる条件に合うかを確認して選びます。[5]
41g×30袋の販売です。熱湯で15分、水(約15℃)で60分が目安。飲用できる水を別に用意してください。スプーン付きですが、袋から食べにくい方は器も必要です。
13,099円(税込・セット総額)
送料は購入手続きで表示されます。
白がゆ30袋の水量・作り方を見るこの白がゆには注水線が2本あり、おかゆとやわらかご飯では加える水と仕上がりが異なります。必要な水量は、お届け品の表示で確かめてください。[5] 少食だからと表示外の水量へ変えず、本人に合う形と食べ切れる量を選びましょう。水も使えない、すぐに食べたい場面には、開封して食べられる別の食品が必要です。
一度に食べ切れる量と、一日の食事量を分けて考える

大きい袋の方が割安でも、一人で食べるには多いことがあります。冷蔵庫が使えない場面を想定し、一度に食べ切れる小さな容器を選び、未開封のものを必要な分ずつ使います。未開封で長く保存できる期限は、開封後には当てはまりません。[7]
一方で、食べやすい少量の食品だけをそろえても、一日を通した食事が足りるとは限りません。おかゆは水分を多く含むため、重さや見た目の量だけでは、とれるエネルギーは分かりません。「1袋で食べ切れるか」と「その組み合わせで必要な食事量をとれるか」は、別に確かめてください。
主食に、普段食べられる魚・肉・豆・卵などのおかずを組み合わせます。少量ずつ食べる習慣がある方は、その回数も含めて数えましょう。栄養補助食品を使っている場合も、いつもの種類と取り入れ方をもとに備えます。必要なエネルギーや栄養量は、年齢だけで一律に決めず、普段の食事や専門家の指示に合わせてください。[1]
普段から魚を食べられる方の、小さめのおかず缶

マルハニチロ さけ水煮|90g×24缶
普段からさけの水煮を食べている方に、主食に添える魚のおかずの候補です。1缶90gで、たんぱく質は15.9g、食塩相当量は0.8g(メーカーの推定値)。[6] 食事制限がある場合は、その指示と照合してください。
90g×24缶の販売です。調理済みの缶詰で、加熱・加水は不要です。[7] 本人がふたを開けられるか、骨や身の食感、一度に使う量を確認します。主食や野菜を使った食品、飲料水は別に用意してください。
10,109円(税込・セット総額)
送料は購入手続きで表示されます。
小さめのさけ缶24缶の内容を見る魚のおかずでも、骨や皮、身のばらけ方が本人に合うかは別に確認します。飲み込みに配慮が必要な方へ、そのまま使える介護食として勧める商品ではありません。主食に何を添えるかや、栄養成分表示の単位の見方は、非常食のおかずの選び方で詳しく紹介しています。
家族ごとに一食を試し、食べられる条件を残す

候補が見つかったら、最初から大きなセットを買う前に、近所のお店などで同じ商品を少量試してみてください。食事制限や飲み込みへの配慮がある方は、先に専門家へ本人に合うかを確認し、普段の指示の範囲で行います。
- 本人が食べる主食とおかずを、いつもの一食に合わせて用意する。
- 災害時に使う予定の器や道具で、本人または介助する人が開封・準備する。加熱不要と確認した食品を常温で使うなら、その食べ方で確かめる。
- 硬さや飲み込みにくさ、味の好み、残った量を確認する。食べにくさがあれば無理をせず、普段相談している専門家へ確認する。
- 食べられた商品と、必要だった道具・介助を家族で共有する。合う食品を食べて補充する。
例えば、次のように家族ごとに残せば、「食べられる」と分かった条件を次の買い物にも使えます。
| 記録すること | 記録例 |
|---|---|
| 食べた人・商品・確認日 | 母/いつも食べている魚の水煮缶/10月22日 |
| 温度・食感・味・量 | 常温で試した。身は食べられた。濃い味は苦手。小さい缶なら一度に食べ切れた。 |
| 開け方・必要な道具や介助 | ふたは一人で開けにくい。器への移し替えと食事は自分でできた。介助なしでも開けられる容器を探す。 |
これは記録の一例です。実際に試した食品と本人の様子に置き換えてください。食事やとろみの指示は、日付の分かる指示書などと一緒に共有し、自己判断で変更しないようにします。
離れて暮らす家族へ食品を送る場合も、届いたことだけで準備完了にせず、置き場所と開け方、食べ方まで一緒に確認しましょう。家族が選んで開けられた商品でも、本人には難しい場合があります。
農林水産省は、高齢者など配慮が必要な方の食品について、少なくとも2週間分の備蓄を勧めています。[1] 本人に合う食品が決まったら、主食とおかずなどを組み合わせ、必要な回数分へ増やしていきましょう。30袋・40袋のセットを買っても、それだけで一日の食事がそろうわけではありません。
期限だけでなく、歯や入れ歯、食事の指示、食べる量が変わったときにも、備蓄を見直しましょう。使いながら在庫を保つ方法は、ローリングストックの続け方を参考にしてください。
まとめ

高齢者の非常食は、本人の普段の食事に合わせ、硬さ、噛む・飲み込む条件、開け方、加熱や水、一食量、味で選びましょう。食事の指示がある方は、その条件を優先します。
まず一つ、本人が普段食べている食品を、開けるところから食べ切るまで一緒に確かめてみてください。食べられる内容と、必要な道具や介助が分かると、次に買い足す食品を具体的に選べます。
主食の候補:白がゆを見る 普段の魚のおかず:さけ缶を見る 食事の形を合わせる:ペースト状おかずを見る
